第八章「西を指す羅針盤」

かすかに、あの快音が聞こえる…

初春きらめく都会のなかで立ち止まって耳を澄ませば、かすかに聞こえてくる。
太平洋の遙か彼方から、青い空に白球が躍り、新緑の芝たちが風を友にして揺れ遊び、真新しい「赤たち」の放つ様々な運動音がここまでかすかに、聞こえてきた。

松井秀喜選手が「赤」に染まったという知らせが届いたのは、今月のこと。
染まった「赤色」に、真新しい「夢」がまたひとつ付け足されたことだろう。
2010年2月。
さあ、松井秀喜選手がゆっくりと動き始めた。
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2002年、創設42年目で初めてワールドシリーズを制したロサンゼルスエンジェルス(Los Angeles Angels of Anaheim、略称:LAA)に松井選手は今季移籍した。アメリカ大陸の東側から西側に大移動した。ユニフォームも見慣れた「濃紺と白色」から「赤色」に大変身。

「10月決戦」の常連として赤色ユニフォームを定着させてきたLAAは、子供たちのアイドルチームだもある。以前、オーナーがあのディズニー社だったことが影響しているのだろう。02年の優勝パレードは前代見物の「ディズニーランド」で実施したことは今は伝説になっている。あれ以来、オーナーこそ変わったが相変わらず現地の子供たちには人気チームに変わりがない。
LAAと言えば、忘れもしない05年だった…。
松井選手がNYYでの3シーズン目のことだ。ヤンキースは地区優勝を果たしたが、エンゼルスとのディビジョンシリーズでは2勝3敗で敗退。松井選手は打率.200と抑え込まれてしまった。エンジェルスの若き豪腕投手・ロドリゲス投手にヤンキース打線は沈黙した…。もしあのときLAAに勝利していたとしたら…。
あれから時は流れて、野球の神様は松井選手を「赤色」に染め直した。まさかエンジェルスの一員になるとは皮肉なものだ。

エンジェルスの闘いぶりはどこか日本野球と似通ったところがある。ブンブン振り回す大砲選手揃いではない。送りバントは当たり前、機会があれば盗塁だって多用する。得点能力をあげるスモールベースボールを監督さんはお好みなのだ。ホームラン得点で勝利しているNYYの超ド派手な打線とは正反対のチームといえよう。超派手なのはユニフォームだけで、作戦はMLBチームの中でも地味の代表格だ。
そんな試合展開でチームをここまで育て上げた監督さんは、マイク・ソーシア監督さんだ。ソーシア監督さんは、2000年から就任している。彼らを「10月決戦」の常連チームに育てあげた人。徒者ではないのです、この監督さんは。NYYは松井選手がいた頃でもLAAとの対戦は苦手だったようですから。
ソーシア監督さんは、ある意味で現役選手の最後は悲運だったといるかも知れない…。
MLBでは名門中の名門、ドジャースでキャッチャー一筋だったソーシアさんはホームランバッターではない。シーズン12本が自己ベストの本塁打記録(1990年)だ。コツコツ当てては確実に出塁するのが現役時代の彼の持ち味だった。ドジャース選手時代、ワールドシリーズを2度制覇。しかし、まだ活躍できる1991年に回旋筋断裂の致命傷を負ったことで現役選手を引退しなければならなくなった。この怪我が現役生活を縮めてしまう。それ以後、マイナーチームの監督やドジャースのコーチをしていた。

ソーシアさんは、とにかくコミュニケーションを最優先する監督さんとして、知る人ぞ知る人物。というのは、英語はもちろんのこと、大リーグ選手はラテン系選手が多数いる。そんなことからソーシア監督さんは、スペイン語を流暢に話す。MLBチームの監督さんのなかでも「バイリンガルはソーシアさんだけだ」と、もっぱら米国スポーツ記者は絶賛している。松井選手が加入したから、そのうち日本語も覚えてしまうかも知れない…。そんな人柄と選手たちからの信頼、しかもこれだけの実績をつくったソーシア監督さんは、エンジェルスの経営陣からも尊敬されていて、なんとなんと、2009年1月に、エンゼルスと2018年までの契約延長を発表している。10年間も監督業を保証されてしまったのである。ということは、彼が60歳を迎える年までチームの指揮を執ることになった。
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では、エンジェルスは今季「10月決戦」に残れそうか、というとこれがまた皮肉なことで、よりによって同じ西地区の「シアトルマリナーズ」が待った!をかけた。今季、今までにない強烈な補強をしてきた。そう、日系監督のワカマツ監督さんが派手に動きまわった。ものすごい! の、一言だ。おそらく、マリナーズ創設以来の補強といえよう。現地記者たちの予想でさえ、イチロー選手の得点王はこれで確実だろう、という声がもっぽら。2001年116勝という驚異的な勝率をあげて地区優勝したが、今季はあの時代の再来との予想だ。
ここ数年、下降気味だったチーム力がジュニアが戻って以来チームの結束力は向上している。あれだけの有力選手をそろえられたのも、ジュニアの顔の広さもあったのではなかろうか。要は、LAAにとっての最大のライバルチームは今季に限っていえばNYYではなくて、同地区のシアトルマリナーズだということを胸にたたき込んでおく必要があるのだ。
ということは、否応なしにイチロー選手対松井選手の対決になってしまう。
走り抜くイチロー選手と、勝負師・松井選手の個性の違いが両チーム対戦の見所になっていくことだろう。LAAとしてはイチロー選手の出塁をなんとか押さえ込もうとするだろうし、SEAは松井選手の打点を阻もうとしてくるだろう…。

そして最大の見物は、ジュニアと松井選手の「腕比べ」が見られることだ。
これこそ個人的には、「最高の舞台」観戦になる。MLB広しといえども、「24番」は個人的に大好きな選手だ。ジュニアの華麗なる打撃フォームは往年のパワーは消えたといえども、いつ見ても美しい。おそらく今季も「4番」を張ってくるだろう。となればだ、松井選手とは正真正銘のガチンコ勝負「4番対決」が見られるではないか。不思議なことに、このご両人ともあちこちの怪我の仕方も、ファンに対するジェントルな応対も、チームの勝利意識もまた、ほぼ同格同列です。
そんなジュニアを奇しくもイチロー選手は、「シアトルの天然記念物に指定すべきだね。みんなで守っていかないといけないと思いますね」というコメントを残している。ジュニアはMLB選手のお手本みたいな存在だ。ステロイド問題が騒がれる中で、600本以上の本塁打を打ちながら「常にクリーンだった」とホセ・カンセコ選手も語っいるほどだ。もちろん、松井選手のクリーンなプレーもまたここであえて特筆する必要はあるまい。それほど両選手は似通っているのだ…。

ジュニアが現役でいるこの対戦切符は今季限りだろうから、なんとしても現地でこの目で実際に観戦したいものだ。
マリナーズ対エンジェルス
今季、これが視聴率トップになることだろう。5月黄金週間があけた7日、8日、9日(現地時間)がその初めての対戦になる…。

さあ、夢は尽きない。
松井選手の活躍を楽しみにしようではないか。

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by mlb5533 | 2010-02-25 16:44 | 第八章