「夢」の、そのわけ…

米大リーグは25日、週間MVP(18~24日)を発表し、ア・リーグはアスレチックスの松井秀喜外野手が受賞した。
松井は5試合に出場し、21打数12安打の打率5割7分1厘に2本塁打、7打点の活躍。20日のタイガース戦での日米通算500本塁打達成も評価された。

松井選手にとっては、ヤンキース時代の2003年6月、04年5月、05年6月に続いて4度目の受賞になった。日本人選手としては、イチロー選手が10年9月に受賞して以来の久々の受賞になった。このところ、大リーグでの日本人選手の活躍がかつてに比べて少なく話題も届かなかったが、今回の松井選手の週間MVP受賞は明るいニュースだ。
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オークランドはニューヨークでの3連戦を終えて、今日からホーム球場で7連戦に突入する。いよいよ中盤のヤマ場へと進んでいく。ところで、昨日の試合は日本ではNHK総合で、生中継だったという。残念ながらボクはその深夜(日本時間午前2時から)は完全に気絶状態。私用の台本書きのヤマ場がすみ、ホッと一息ついたら意識不明だった。松井選手ファンのジュンジュンさんも含めて、多くの方がこの試合観戦で徹夜状態だったこととお察しします。
まあ、この試合は徹夜しても価値のある試合でしたね。なんとまあ、松井選手は「3番・指名打者」で出場して、5打数5安打1打点の大暴れだった。左前打、左前打、右中間二塁打、左中間二塁打(打点1)、右前打で打率は一気に.237に急上昇。
オールスター直前、打率は.209まで落ち込んでいたのに、僅か10試合でこの数字だ。

試合は5-7で敗れたが、この3連戦の内容は決して悪くない。打撃陣の活躍が光る。
NYYを相手に14点も奪われての敗戦だったが、打撃陣は7得点していること。
2試合目には、ジーター選手が4打数3安打の暴れぶりだったが、それでも松井選手の例の「501号」が飛び出し、押さえのベイリー投手がテシェイラ選手に一発を浴びたものの、後続をしっかりと断って、4-3で勝利。3戦目は松井選手の5-5が代表するように、チームはこぞってNYY投手陣を相手に打ち込んでいた。この試合展開を見る限り、オークランドはウィーク選手の如く、確かに若者揃いだが、まだまだ諦めるのは早すぎだろう。数字上ではもはや不可能に近いが、大リーグは日本野球界と違ってなにが起きるかさっぱり見当が付かない。今季のシアトルの例もあるのだから…(シアトルファン、失礼!)。

今日、アメリカ大陸の東の端から西の端に戻ってきたオークランド。いまから1時間もしない間に、移動日ナシで試合が始まる。ボクもかつてアメリカ生活をしたことがあるが、この大移動は疲れる。できることならお休みさせて欲しい。そんな実感が蘇ってくるが、オークランドの選手はエライ! 休養ナシで7連戦に突入するのだから…。

そうそう、このブログのタイトルである「夢物語」だが、いまさらだが、ちと、説明だけしておこう。
「夢って書くからぼんやりする」とか「夢というから届かないと、暗示する。それはつまらん」とか「夢。女みたいだなあ、マツイにはふさわしくない」と、いままでに散々言われたものだ。

ここであえて「夢」と書いたのは…。
それは松井選手がヤンキースに入団する時、記者発表の席上でのコメントだ。「裏切り者と思われるかも知れませんが…」と前置きしながらアメリカに渡る決意を語ったあの記者発表だ。ボクは彼が巨人軍時代、いまほどには気にとめてはいなかった。
「ずいぶんホームランを打つ打者だねぇ」程度だった。
だが、この記者発表は、ボクの心に響いた。「ここまで言うからには、相当に考えてのこと。全くの未知の世界に飛び込む不安と恐れも抱えたまま、どうしても成し遂げたい何かがあるのだろう」と。そしてボクはたったひとりで当時さほど好きではなかったアメリカに渡り、生活をした体験もあった。自分の体験とマツイ青年がこれから始まる生活…。あっちで生活をしていれば珍プレー、好プレーの連続だろう…と、自分の体験と照らし合わせる。そんな事だけでも、親近感が増したのだ。

「成し遂げたい何か」は、ボクにはわからない。本人だけがわかっていればいいこと。
このときだ、学生時代読んだT・E・ロレンスのことばが蘇った。
「夜みる夢なんぞ とるにたりない。
最も危険な夢は 男が昼間目を開けて見る夢だ。
なぜなら、それを実現しようとするから…」

T・E・ロレンスが書いていた「夢」という単語が、松井選手のコメントとボクにはダブったのだ。ハッとした、と言ってもいい。ベースボールを通じて、「成し遂げたい何か」がこの人にはあるのだろう、と。そのビジョンは、かぎるなく大きいものであって欲しい…とさえ思ったものだった。

昔々のことだ、長嶋監督が選手時代に週刊現代の記者さんからインタビューを受けてこんなことを言った。
「社会主義になったら野球が出来ない」と。当時、物議を醸し出したコメントだったらしいが、いま思えば、自由人・長嶋さんらしい。ボクはこの話を先輩記者から聞いた時は吹き出して大笑いした。だが、これもまた、松井選手の「夢」同様に、長嶋選手には「成し遂げたい何か」があったのだろうとボクは思う。

ボクは勝手に思う。誰の中にも、とくに男たちには「T・E・ロレンス的な夢」を持っているものだ、と。闊達で平和なグランド…、罵声も笑い声で消されてやがて許され、ソースを膝に垂らして汚しながら観戦する人々、勝敗やごひいきスジの選手の一挙手一投足に歓声を上げること…などなど。グランドとはまるで、社会、世界のようだ…と、見ることさえ出来る。力いっぱい元気に生きている人々の平和がそこにある、と。ボクが小学生時代、父に後楽園球場に連れて行ってもらった。確か、夏休みだった…。巨人軍の選手たちがボクの目の前で戦っている。始めて見聞きする生のバットと球の衝突音、アンパイアの大声、応援団の太鼓や鈴の音…生の試合を始めて見たボクは、あの時全てが輝いて見えた。
「すごいなぁ、すごいねぇお父ちゃん…」あれからボクは巨人軍の大ファンになった。

この「夢」とは、男たちのビジョンといってもいいだろう。
目標、というものでもない。「夢に向かう」と思うから、届かない、と思う。そうではない。
「ビジョンに生きる」というか、夢を見出した瞬間、男たちは今将に自分が描いたその夢の中にいる…。

いま、またその男が疲れも吹っ飛ばして、グランドで戦う。夢の中で…。


…NY152…
by mlb5533 | 2011-07-26 11:38 | 第九章