ダルより気になる…

来季もまた、日本のプロ野球界からMLBに移籍していく選手が多い。
とくに日本ハムのダルビッシュ有選手の話題はひときわ群を抜く。この季節になるといつも浮かんでくるのが、野茂投手のことだ…。

韓国の俳優に、ペ・ヨンジュンさんがいる。お馴染み「冬のソナタ」で日本にお目見えして以来、ヨン様の愛称で主婦層を中心にして「韓流ブーム」のきっかけになった俳優さんだ。彼が登場して以来、日本の芸能界と韓国の芸能界がずいぶんと接近した。あれ以来、続々と韓国のアーチストが日本の舞台、テレビに登場するようになった。きっかけは、「冬のソナタ」であり、笑顔がさわやかなヨン様の人柄だった。
それまで、戦後から日本人の韓国に対する印象は、ヨン様の登場以前はけっして明るいものではなかった。どこか無意味な差説感を感じさせたり、無意味に遠ざけてはいなかっただろうか。しかし、突然まさに流星のように登場したヨン様は「雪」を背景にして、「初恋」を携えて日本のお茶の間に登場した…。韓国ドラマの存在を強烈に印象づける韓国の芸能界にとって「冬ソナ」は、日本上陸の「デビュー作」でもある。もし、ヨン様がいなかったとしたらここまで日本人が韓国の芸能界を追いかけ回しただろうか、と思う。個人的な意見だが、ヨン様は民間外交以上の功績を残した歴史的な芸術家と呼べるのではないかと、ボクは思う。彼のおかげで、韓国と日本との関係は政治の世界からではなくて、民間どうしで手を取り合った、と感じるのだ。

そして、今日のこと。MLBにダルビッシュ投手が移籍するようだ。
野茂投手は1995年のことだった。980万円でドジャースのマイナー契約をしていた。そして、忘れもしない5月2日にはマイナーから這い上がって、サンフランシスコ・ジャイアンツ戦でメジャー先発を果たした。6月2日のニューヨーク・メッツ戦でメジャー初勝利を挙げ、14日のピッツバーグ・パイレーツ戦で球団新人最多記録の、なんと16奪三振を記録する。24日のジャイアンツ戦では日本人メジャーリーガー史上初の完封勝利をボクたちに届けた。29日のコロラド・ロッキーズ戦まででサンディ・コーファックスを抜いての球団新記録となる4試合50奪三振を達成してみせる。そんな野茂投手の姿をいつしか、映画「ロッキー」の物語にも似せて、日米両国の野球ファンたちの間では「NOMOマニア」のことばさえ生まれたほどだったではないか。

野茂投手の存在は、米国人の日本に対する印象を大きく塗り替えたと言えよう。野茂投手が這い上がっていく様子は全米のテレビでも紹介され、ドジャースの監督さんのコメントまで放映したものだ。米国は努力する人を評価する国民性だ。そして、舞台は米国のショービジネスの代表でもある「プロスポーツ界」での物語だから野茂投手の活躍には、よけい親近感があったのだろう。野茂投手は自分でも言っていたが「ボクはどうしてもメジャーに行きたかったわけではない…」と。
日本球界が彼を失った代償は大きいと思う。日本野球界の選手と管理者、球団とファンとの関係も改めて見直されたのも、野茂投手の移籍がそのきっかけをつくっている。旧態依然とした選手管理を続けた球団側と個人の人格を尊重して欲しいと考える選手側の気持ちに、一投を投じたのはまさに、野茂投手だった。あれ以来、各球団の選手に対する扱いに変化が生じたのはご承知のとおりである。そんな立場も含めて、野茂投手こそMLBと日本球界、日本人と米国人を新しく繋いだ事実上のパイオニアである。日本球界にノモ様がいなかったら…そう思うと今日のダルビッシュ投手の話題もなかったかもしれない、と。ノモ様はヨン様同様、ボクにとっては民間外交以上の功績を残した人物として歴史的価値を持つ人として映っている…。

とにかく、日本人選手にMLBが注目したのは事実。野茂投手の大活躍がMLB球団の目に留まった。その後、イチロー選手が、そして松井選手が、松坂投手がMLBに移籍した。三人の大活躍はここで記すこともなかろう。彼らの活躍がさらに地元大リーグファンと球団に日本人選手の頼もしさをアピールしていく。斎藤隆投手のように地味な活躍もまた、米国気質にマッチする。あの穏やかで決して悪口を言わない斎藤投手の人柄もまた野茂投手のようにチームメイトから愛されるのは国際的にも当然だろう。

確かに野球ファンからしてみれば日本を代表するスーパースターたちが続々と太平洋を渡ってしまうのはいかがなものか、と嘆く人たちはいる。このままでは、日本球界とはMLBのマイナーチームではないか、と批判する声も聞こえてくる。ポスティング制度とは、要するに球団が利益を上げるための精度ではないか、と経済活動の面から批判されるだろう。 こうした批判の声を日本の球団が今後どのように対応していくのかも、気懸かりだが…。

ボクは個人的には日本選手がMLBに移籍するのは大歓迎、という立場を取っている。
みなさまもご承知のとおり、09年のワールドシリーズでのこと。ヤンキース・松井選手がフィリーズ・マルチネス投手から2本のホームランを打ちましたね。こんな光景が現実になると言うことだ。日米通算500号本塁打のときも、電光掲示板に紹介された。地元ファンからも大歓声と拍手をいただいた。いかに、歓迎されているかがよくわかる。

野茂投手自身が「オレがMLBのパイオニアになってやるぞ!」と息巻いて渡米したのではない。しかし、彼の姿がそのまま「日本人選手たちのパイオニア」になってしまった。それでいいと思う。

今季もまた、多くの日本人選手がMLBに移籍する。全員がいい結果を出して欲しいと、ボクは願う。今季、上原投手はあのような悔しい結果になったにせよ、来季はあの美しい球道を描く変化球をなんとしても復活させて欲しいと願う。そして、来季はレッドソックス・マツザカ君が復帰する。もし、ダルビッシュ投手が報道通りにレンジャーズに移籍が出来たら、ふたりの投げ合いは現実になる。そうなったら、派手好きの米国メディアのこと、「2億ドルの投げ合い」と報じて、全米のファンがお茶の間のテレビ前に大集合することだろう…。それでいいとボクは思う。

最後になったが、ボクが一番気になっていることがある。そう、松井選手の去就だ。
つい先日まではアスレチックス残留がいいかも…と思っていたが、デヘスース選手もクリスプ選手も、ウィリンハム選手も移籍した。外野は誰もいなくなったアスレチックス。いまのままなら、マリナーズより弱すぎる(失礼!)。レンジャーズに移籍との報道もあった…。いっそのこと、ヤンキースに戻ったらどうかとさえ思う…。「10月決戦」になにがなんでもボクは松井選手が残っていて欲しい。そんなチームに行って欲しいのだ。今季は悔しくて仕方がなかった。こんなに悔しいシーズンは初めてだった。先日ホームランカードが届いたが、さほど興奮もせず静かにケースに差し込んだ。松井選手は自分でも言っていたが「(手術後)体は今年いちばんいいですよ」と。膝は大丈夫なのだ。ということは、決して晩年ではないのだ。まだまだやれる選手なのだ。斉藤投手だっているではないか、ジョンビ選手だって現役だ。来季、かりにアスレチックスに残ったとしても、今ではその実力はヤンキースを越えて30球団第1位を誇る打撃陣のレンジャーズ。エンジェルスにはプホールズ選手が移籍してきた。その上で、ダルビッシュ投手がレンジャーズに行くとのこと…。アスレチックスは松井選手ひとりではとてもとても太刀打ちできない…。
どうなるのか、松井選手の去就が一番気になる。


…NY152…
by mlb5533 | 2011-12-21 11:16 | 第九章