「夢」と「お金」は別のお話

「宝物」イコール「高額」と連想する人たちは、確かにいる。
ダイヤモンドなどの宝石や古物品に金銀財宝…などを「宝物」という人たちはいる。

日本の宝、という言い方や書き方をされるとボクは「国宝」を連想してしまう。日本の文化的芸術品であったり、歴史的な文献や造形物を想う。日本の「宝」である。
日本の宝物は、たとえ他国のコレクターたちが「高額」の値踏みがあっても、取引できるものではあるまい。更に言えば、「お金」で「換算」できないものであろう…。
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気になっているのは、最近の松坂投手の報じ方である。
日本のメディアによれば、松坂投手は日本球界の「至宝」…らしい。くどいようだが、日本のメディアによれば、である。従ってその価値は、「高額」に値するのだ、と言わんばかりの報じ方をしている。
20億円、いや30億…80億円との声も聞く、というのだ。長期契約になれば118億円相当になるかもしれないと、もはや日本のメディアによれば「松坂投手の値踏み」は天井知らず。

それにしても、摩訶不思議なお話ではないか…。
「至宝」だ、と言っておきながら、人手に渡す。それも「高額」なら…と、条件を付ける。
「低額」ならどうなるのだろう…と、疑問すら起きてくる。
ここに、子供心のような…「童心の夢」がない。実際、松坂投手自身「自分はナンボで買ってくれ。さもないと、日本で野球をする」と言っているのだろうか?

さらに気になるのはこのオフに多くの選手たちが「大リーグへ」と言う報道が相次いでいる。
38歳になった「東京G」の元エースが「大リーグも視野に入れて…」と言っているとの報道だが、なんだろうなあ…これって? って、疑問符が付いてしまう。日本球界ですでに通用しなくなった投手なのでは…? という疑問符だ。かつて、日本を代表するストッパー江夏投手がいたが、彼も選手生活の晩年は日本球界からオファーがなく、渡米して大リーグに挑戦したが、3Aにもオファーされることなく、結局帰国している。東京Gの元エースもそうなるのではなかろうか…と不安になる。
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Major League Baseball(MLB)とは、世界中に散在する野球人たちの「夢舞台」であり、現実の「物語」である。憧れて参加できる舞台でもなければ、自惚れも過大評価も、同情すら入り込む余地がない場所である。いわんや「おとぎ話の舞台」ではない、とボクは思っている。
打つ、走る、投げる、捕る…の基本動作そのものが「美」である人たちが集まり、彼らにのみ「夢」を追い求める資格が与えられている。それが、MLBだ、と。そして、彼らが自分の「夢」を追い求めて毎試合ごとに全力でプレーする姿を、まるで我が事のように錯覚できる「幻想」をファンに抱かせてくれるのも、また、彼らMLB選手たちの「仕事」でもある。従って、選手と観客の間にあるものは「夢」である。MLBの選手ひとりひとりと、スタンドで観戦する人たちは「共通の夢」で繋がっている…。

「夢」を見る資格がある、これがMLB選手になる最低条件なのだ。長年、大リーグを観戦して、ボクはそう思う。現実のお話、なのだ、この「夢」とは。なぜなら、「夢」とは「目標」だから。目標をヒットできる最低条件を満たしている人材か否か…。
では、「夢」が現実になったら何が彼に与えられるのか? 球団がデザインした「指輪」だそうである。指輪…でしかない。しかし、その指輪が放つ「環光」の輝きは、栄光そのものであり、生きた証に他ならない。歴史にその名を刻むという意味を含んでいる。
MLBのドラマとは、目を開けて見る男たちの「夢物語」である。

日本がダメならアメリカがある…か? いや、ない! 悲しいかな、それは…ない!

日本で「至宝」とまで言われている選手が日本球界を去って大リーグに行く、という最近の「傾向」を「習慣」になったら悲しい。それも「いかに高額」かを競うのは、さらに悲しくなる…。松井選手がヤンキースに入団した年、キューバから亡命したコントレラス投手は僅か2年で解雇され、シカゴホワイトソックスに移籍している。松井選手の入団など当時はさほどニューヨークのメディアには対象になっていなかった。それより、コントレラス投手の記事が踊っていたものだ。それも、目の玉が飛び出すほどの「高額」契約金だった…。しかし、1年目は7勝、2年目は8勝しか出来なかった。ファンとかわした「夢」が消えていった…。キューバの「至宝」でさえ、この結果だった。そのことを日本のメディアはわかっているのだろうか…。松坂投手をあれだけ持ち上げるだけ持ち上げておいて…。ファンたちの「夢」の見方を知っているのだろうか? なんとなく、だが、ボクは松坂投手が哀れでならない。男の価値を「お金」で値踏みするのか、と。もしそれが「いいことだ」と言うのなら、ずいぶんとお品のない人柄と思われるのでなかろうか。「高額で引き取ってくれる球団ならどこにでも」というのなら、是非ヤンキース以外にしていただきたい。ヤンキースを「野球商売」の当てにして欲しくない、とNYYのファンたちは言うだろう。
YankeeStadiumは、100年の歴史がある。100年間の「夢」が光っているスタジアムだ。「裏切り者といわれるだろうけれど、ヤンキースに!」と絞り出すように叫ぶ選手が「夢」を抱えて太平洋を渡ってくる来るのが、ヤンキースというチームの「美しさ」であり、「魔力的な輝き」である。ヤンキースとは「夢」の球団である。そんな球団に仕立て上げたのはフロントの努力もあろうが、それ以上に、選手とファンがお互いに「夢」を共有してきた歴史的背景が、ヤンキースをそんなチームに育て上げたのである。
「高額でその身を買ってもらった投手」が来るところではない。
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仮にそんな形で来たとしたら、NYYのファンたちからは「夢」の共有はなされないだろう。「所詮、金次第の選手」とのイメージがつきまとうのだから…。
松井選手の年俸は高額である。しかし、それも彼が実力で示してきたことを多くのファンたちは知っている。5月の「あの事故」もまた、チームへの貢献プレーだったからファンは松井選手の事故を憂いた。だから、復活した日、想像を絶するNYYファンの歓声が巻き起こったのである。さらに、その日、4打数4安打の神懸かり的打撃をヤンキースタジアムで披露している。もはや、あの日の出来事は「ヤンキースの伝説」になった。
「夢」が、生きていた!

「お金」で入団する選手は、MLBだから、それはいるだろう。しかし、そのぶんファンたちからは「夢」を差し引かれることを覚悟すべきである。A・ロッド選手がそうであるように。肝心の「10月シリーズ」で「調子が悪くて打てませんでした」では、ファンは憤る。納得したくない、のだ。それがファンたちの「夢」の見方なのである。

日本球界から太平洋を渡りたがっている選手が多くなった。それを日本のメディアも書き立てる。
が、各球団には「ファン」というもう「ひとりの選手」がいることを、知っておくべきではなかろうか…。とくに、MLBファンの「選手根性」はプロだと言うことを知るべきだ。「夢」でつながった選手たちのみを声援するということを…。

米大リーグは、今季の総入場者数が7604万3902人で、3年連続で最多記録を更新したと発表した。昨季より1・5%増えた。マイナー・リーグの入場者は4171万357人で、メジャーと合わせた観客は1億1775万4259人となる。この数は、おおよそ、日本の人口に匹敵する。ベースボールが米国国技と言われるゆえんだ。今季は24チームが200万人を超え、そのうち8チームが300万人を超えた。
ヤンキースは424万8067人で、2年続けてア・リーグ記録を上回った。
このほか約376万人のドジャース、約341万人のエンゼルスなどが球団記録を更新している。約293万人のレッドソックスは7年連続で球団新だった…。この数を、日本のスポーツメディアはなんと読むのだろうか。
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…NY152…
by mlb5533 | 2006-11-07 02:42 | 第一章