好敵手との3日間

今日の試合はボストンにとって、なんとしても勝たなければならない。そして、ヤンキースにとっても今日は絶対に打ち勝つ必要があった。お互いに今日の試合だけは、負けるわけにはいかないのだ。
ボストンフェンウェイパークは、試合開始直後から異様なほどの熱気がスタンドに漂っている…。

4月、ALでの両チームの流れは、ヤンキースが勝率5割でレッドソックスは7割。毎年のことだがヤンキースの開幕月はこんなものだ。しかし、ボストンが違っている。ボストンは例年こんなにもスタートダッシュするチームではなかった。ヤンキース同様、過去4月はさほどの成績を挙げているチームではなかったのに…。
もし、ヤンキースが今日の試合を落としたら、フェンウェイパークで17年ぶりのスイープを許すことになり、勝率は5割を切ってしまう。3連敗したら、ボストンにまたとない好機を与えると同時に、弾みをつけさせてしまう。そして、今日はこともあろうに、先発投手はあの松坂投手である。
だから、ヤンキースはなんとしても、「打ち勝つ」必要があったのだ。

ただ、ヤンキースの戦力は確かにフルパワーという訳ではない。
投手力は現在、どんなにひいき目に見ても「Cランク」なのだ。この大切な3連戦で昨日先発したのが、ジェフだったことを見ればわかる。決してジェフ投手個人を「Cランク」と言うのではなくて、投手力全体のことだ。先発投手が機能していないとのハンデを背負っての3連戦だという意味である。だから、いまのヤンキースが勝つ為には「打ち勝つ」以外の戦術は見つからないのだ…。今日の試合も、経験のないライト投手を先発にしている。
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松坂投手とライト投手。

松坂投手の攻略は簡単だ。彼の肩が温まらないうちの、立ち上がり1,2回に打ち込めればなんとか勝算はたつ。中盤まで松坂投手をマウンドにいさせるようなことになったら、なかなか攻略することは難しくなる。彼はそういう特徴を持った投手なのだから。神に祈る気持ちで、ヤンキースの早めの打撃集中を願って観戦していた。そして、神に祈る気持ちで、ライト投手の好投を願って見守る。ヤンキースを応援するボクは、初戦をリベラ投手で落としたことが今更ながら悔やまれて仕方がない…。

案の定、ヤンキースは松坂投手の立ち上がりを叩いた。
制球が定まっていない松坂投手から、死球のA・ロッド選手と四球のアブレイユ選手を塁上において5番ジョンビ選手がセンターへ2塁打。2点のタイムリー先制打。
3回、またもジョンビ選手のタイムリーでデーモン選手が得点して、3点。

BOS 0-3 NYY

ヤンキースの先発ライト投手がなんとか3回2死まで押さえている…。
しかし…野球の神様は、この若きライト投手に、彼の人生でもっとも困難な試練を与えたのである。

4番 ラミネス選手
5番 ドリュー選手
6番 ローウェル選手
7番 バリテック選手

の4人に、連続本塁打を打たれてしまう…。ボストンレッドソックス100年の歴史で、4者連続ホームラン記録は今回が球団史上初めてである…。4点の獲られ方が若い経験のないライト投手にはあまりにもむごかった。ボクはじっとテレビ画面を見つめて奥歯をかみしめることしか、出来なかった…。2死までいっていたのに…。悔いても悔いても、彼の心は沈んだままだったことだろう。ライト投手の気持ちを察すると、ボクは悔しさを止めることが出来なかった。
「なんてことすんだよ、野球の神様は…。ライトはまだこんな若さじゃないか…。ひでぇよ…」
大舞台経験ゼロのライト投手と1億ドルの松坂投手がいま同じマウンドで闘っているというのに…。

BS中継の解説者とアナウンサーは、そんなことには触れようともせず、
「スゴイ、やりました」「ヨシッ!」と絶唱を繰り返す。この解説者とアナウンサーは昨年まではヤンキース側のコメントが多かったのに、なぜか今季からボストン側のコメントが目立つ。手のひらを返した彼等の解説にも、ボクは悲しみが増した。

BOS 4-3 NYY
4回、ライト投手の姿はどこにも見あたらなかった。

テレビ画面は熱狂するボストンファンを映し続けている…。
ボクは痛々しい場面を見続けながら、思った。
ライト投手にとっては、この試合は生涯忘れないだろう、と。自分を辱めた出来事として、忘れることがないだろう。この屈辱を胸にきちんと仕舞い込んで、今後先発するマウンドでの活かしていくに違いない、…と。そうしなければライト投手の先発する意味がなくなってしまう。
「神様、あなたにひとつ貸しておきます…。いずれ、返してくださいよ」そうボクは思った。

やがて試合は動く…。
5回だった。ジーター選手がここで松坂投手から同点のソロホームランを打ち込む。今シーズンの第1号本塁打を、ボストンマツザカ投手から打った。
これで、
BOS 4-4 NYY
このホームランでライト投手の「負け」が消えた!
今日ほどジーター選手が頼もしく見えたことはない。これこそ「ヤンキースのキャプテン」の証明だ。
この一振りは、ライト投手の傷ついた心を癒したに違いない。ボクは、そう思いたのだ。
ジーター選手が打ったホームランだから、意味がある。ボクにとってジーター選手のこの本塁打は、ヤンキースの「チームプレー」としての意味があり、この試合で、しかもこの場面で打ったのが、キャプテン・ジーター選手だから、その意味は深まる。

6回。
ヤンキースは更に松坂投手を攻める。カノー君とミンケイビッチ選手が連打して、1,3塁。
カブレラ選手がショートゴロのゲッツーの間に、カノー君が生還して、
BOS 4-5 NYY
4者連続本塁打がこの時点で、帳消しになった。逆の言い方をすれば、松坂投手はこの場面で4者連続本塁打の大記録を自ら帳消しにしてしまった、守りきれなかった、とも言える。そして、驚いたのはその6回裏、ボストンの攻撃の局面だった。ヤンキースはなんと、ペティット投手を中継ぎに送り出したのだ。トーリ監督の「意地」にボクは納得できる。「負けるわけにはいかない」のである、今日の試合は。ペティット投手は、2番ユーキリス選手を四球で歩かせたが、オルティーズ選手をダブルプレーできっちりと仕事をしてマウンドを降りた。

ボストンは松坂投手がマウンドを誰にも譲らず、投げ抜いていく…。
そして、あの7回裏。プロクター投手がマウンドに立った…。防御率2.45、ヤンキース中継ぎ陣の柱である。ところが、この日好調のラミネス選手、ドリュー選手に連打されて、ローウェル選手に2打席連続となる3ランホームランを浴びてしまった。
BOS 7-5 NYY

8回、投球数100球を超えてもマウンドには松坂投手が続投だ。この回の先頭打者A・ロッド選手がこの日初のヒットを打った場面で、ようやく松坂投手はマウンドから降りた。その直後、ヤンキースは1死満塁と攻め立てたが、カブレラ選手の内野ゴロで1点挙っただけの悔いが残る攻撃だった。
BOS 7-6 NYY
そして、9回。1番デーモン選手からの好打順だが、ボストンのパペルボン投手に押さえられて試合終了。3連敗だった。
この結果で、ヤンキースの勝率は5割を切った。首位をいくボストンとのゲーム差は4.0と突き放されてしまった…。

おそらく各メディアは今日の試合を例によって「マツザカ」記事に仕立て上げることだろう。寄りによってA・ロッド選手とジーター選手に死球を投げたことだの、A・ロッド選手を2奪三振した球質はなにかだのと…、そして対ヤンキース戦は「自責点6」であったことよりも、「2勝目」を大々的に報じることだろう。好きにすればいい、とボクは思う。マツザカの話題作りに熱をあげて、ベースボールの物語を伝えないメディアには、もうウンザリしている。はっきり言って、マツザカはヤンキースから6点獲られているのだから、彼個人としては「ヤンキースに勝てました」とは思っていないはずだ。
ボクには、これだけ騒がれて太平洋を渡った松坂投手を「大リーグの投手です!」とは現時点ではまだまだ言い切れないでいる。なぜなら、ボクにはあの「野茂英雄投手」の活躍がいまだにこの目に残って、忘れなられないでいるからだ。野茂投手を忘れようと心で思っても、この目が覚えているから…。
松坂投手もボクは心の奥底では、実はそんな投手になって欲しい、と願っているのかもしれない。このままでは、メディアの「好餌」になりかねない、との心配さえあるのだから。
野茂投手の魂を受け継ぐニッポンの投手、それが松坂投手…と、ベースボールを愛する人々からそう言われて欲しい、と願っているのかもしれない。真の大リーグ投手…と。

さあ、いよいよ明日から、松井秀喜選手がヤンキースに帰ってきてくれる。その上、先発は井川投手だ。ボクはまたヤンキースを応援し続けます。
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(写真素材はYahoo!sportsより コラージュは筆者)

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by mlb5533 | 2007-04-23 17:14 | 第四章