若き「レイズ」軍団を育てた人々

伊達や粋狂で97勝は出来ない。
時の勢いとか、若さだ、偶然だ、とかいうことだけでかたづけてしまうのは甚だ説明不足というもの。

これだけの勝ち星を大リーグのペナントで達成している事実は、やっぱり「レイズ」は今季、王者だったと素直に認めるべきなのだ。ほんとうにレイズは「強い」。その強さは、正真正銘、本物である。
大リーグの王者とは、「ヤンキース」である。歴史的にも、その実力的にも、風格でも、他球団を圧倒している。プロ中のプロ軍団、である。そのヤンキースが「今季、最悪」との批判があるが、89勝しても、この批判である。シカゴホワイトソックスが中部地区で優勝したが、89勝だった。リーグは変わるが、ドジャースは84勝で地区優勝して「10月決戦」に進出してきた。主力選手のけが人が続出したヤンキースの今季、89勝していればむしろ「よくやった」と承認されてもいいはずだが、そこはそれ、常勝が義務化された球団。勝って当然、との評価。常勝チームでいるために、ヤンキースは莫大な資金力を蓄えておく経営を強いられている。

そのヤンキースとは「宿敵」と言われ続け、プロスポーツ界では最高の人気カードとされているのが「対ボストンレッドソックス戦」だ。両チームは大リーグの同地区でペナントを競い合ってきた。だから、この「10月決戦」には、両チームの戦いが「恒例の10月」になっていた。

しかし、今季は違っている。
ボストンと戦っているのは「レイズ」。そして、今日「レイズ」はボストンを、
13-4
と、圧勝した。この勝利でレイズは、リーグ優勝にあと1勝すればいい。

ウェクフィールド投手の立ち上がりを攻めた。ペーニァ選手の2ラン、ロンゴリア選手のソロホームランと2者連続本塁打でいきなり3得点。6回には、満塁から単打と四球でじわじわ攻めて、5得点を加点。6回までに11-1の大差をつけてしまった。

こんな強いチームに育てあげた監督、そしてコーチ陣…。「万年ビリ」「世界で一番ヨワっこちぃチーム」「大リーグのお荷物」とまで酷評されながらも、地元観客が来てくれるように頑張ったであろうオーナー…。きっと今頃彼らは自宅で「明後日のダイスケ対策」を熱い思いで、それぞれがさまざまに思い描いているに違いない。こんなに素晴らしい「レイズ」に育てあげたのは、どんな人々なのだろう…。
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06年にピネラ監督に代わって監督就任したのが現在のジョー・マドンさん。この人、確か…大リーグ経験のない人だったはず。とにかくロサンゼルス・エンゼルスでベンチコーチをしていた経歴はあるのだが、大リーグの監督業としては「無名」に近かった人物。この年、また100敗以上で指定席・最下位だった。で、また監督が変わるのかも…と、思っていたらマドン監督がそのまま続投。
07年、日本から、岩村明憲選手が入団した。打線は頑張ったが、結局66勝96敗と元の最下位で終了…。要は、投手がヨワっこちぃ、のである。この年、リリーフ陣の防御率6.16というのは過去50年間、メジャーリーグワーストを樹立したほどなのだから。打っても打っても、点を取られる投手陣。これでは野球になりません。

この間、レイズはヤンキースのスターだったティノ マルチネス選手を獲得したり、野茂投手を迎えたりと頑張ってはいたのだが、なかなか思い通りには…。

そして、今季。投手陣がようやく育ってきた。マドン監督のよろこびとは別に、このチームには「大リーグのオヤジさん」がいることを忘れてはいけない。通称「ポパイ」の、ドン ジマーコーチである。
1996年から2003年、ヤンキースのベンチコーチだった。ジョー・トーリ監督を支え、この時期に6度のアメリカンリーグ制覇と4度のワールドシリーズ制覇を達成してみせた。ヤンキースの主将・ジータ選手にとっては、まさしく育ての親でもある。ドン ジマーコーチはジータ選手を我が子のように可愛がっていた。03年のリーグ決定戦、ボストンとの対戦で自軍の選手をかばう為、マルチネス投手に突進。同投手に投げ飛ばされ、脳しんとうを。それほどドン ジマーコーチは自軍の選手たちを可愛がる。
ドン ジマーコーチは、監督歴も豊富だ。サンディエゴ・パドレス(1972-1973年)、ボストン・レッドソックス(1976-1980年) 、テキサス・レンジャーズ(1981-1982年)、シカゴ・カブス(1988-1991年)だ。 彼の背番号は、自分の大リーグ歴にしている。で、いま「背番号60」ということは、彼が大リーグと契約して今年で、「60年目」だということだ。ヤンキースに松井秀喜選手が入団したとき、ドン ジマーコーチは、55年目だったが、自分の背番号をいとも簡単に松井選手に譲っている。ここにも、彼の自軍の選手に対する親心が現れている…。

その彼がいま、シニアアドバイザーとして若き軍団「レイズ」をマドン監督とともにここまでに育て上げた。今年77歳、いまだに選手たちに混じってベンチ入りしている。

今日は4番・ロンゴリア選手が、ペーニァ選手が、アイバー選手がホームランを打った。ソナンスタイン投手が「10月決戦」2勝目をあげた。アプトン選手も5本のホームランだ。
打ってヨシ、投げてヨシ、走ってヨシ…の、もの凄いチームに育ったではないか。

観客動員になんとか知恵を搾ったスチュアート・スターンバーグオーナー。彼は、「カウベル」を考案して、大リーグでも珍しい音が出る応援を普及させた。いまでは、地元トロピカーナ・フィールドではこの応援の仕方は名物にまでなった。

ドン ジマーさんは、いまどんな思いで自軍の活躍ぶりを見ているのだろう…。
ロンゴリア選手たちの育っていく姿を、彼はいまどんな思いで見つめているのだろうか。大リーグ生活60年、自分の人生をベースボールに捧げた彼がいま、自分の育てあげた若々しいチームが「あと1勝」でリーグ優勝出来るまで、こぎ着けた。
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「あと1勝」…、相手はボストン・レッドソックス。
そして、その先発投手とは、日本球界が誇りを持って大リーグに送り込んだ怪物・松坂投手…。
ボストンとて、みすみすこれだけでは引き下がるわけにはいかない。ダイスケにすべてを託した昨年の覇者・フランコナ監督…。

いざ、決戦である。

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by mlb5533 | 2008-10-15 18:09 | 第六章