「A・ロッド選手事件」に思うこと

ヤンキース4番打者A・ロッド選手が01-03年、テキサス時代に薬物使用をしていたことが、本人の謝罪から明らかになった。
これに、レンジャーズのトム・ヒックス・オーナーが電話記者会見した。


同オーナーは「すべてが驚き。アレックスに裏切られ、だまされたような気持ち」と厳しい言葉を続けたという。薬物使用がレンジャーズ在籍時の3年間に限られるというロドリゲスの説明には「レンジャーズに来てから使い始めたと、今になって彼が認めても信じない。それ以前に始めていなかったと、どうして信じなければならないのか」と疑問を呈した。
現在はドジャースを率いるトーリ監督は「(薬物問題は)野球にかかわるわれわれ全員に責任がある。彼が公の場で堂々と批判を受け、責任を負ったことをうれしく思う」とコメントした。
そして、
米大リーグ、ヤンキースのロドリゲス内野手が過去の薬物使用を認めたことについて、オバマ米大統領は9日「大リーグを汚す、不幸な出来事」などと述べた。また子どもたちへの影響を憂慮した上で「大リーグがこの問題を深刻に受け止めていることには満足している」と語った。
…と、サンスポのMLBサイトは報じている。

超破格の年俸契約でシアトルからテキサスに移籍したA・ロッドは「それだけの年俸にみあうパフォーマンスをしなければ、との重圧を感じていた」ともコメントしていた。

自ら、薬物使用を認めたA・ロッド選手。この報道は日本ではさほど話題にならないだろうが、一国の大統領までがコメントしているのだから、ベースボールの本場米国では、私たちの想像以上の「事件」になっていることだろう…。

プロスポーツの悲しさが、今回の「A・ロッド選手事件」に浮き彫りにされたと思う。ショウビジネスとしてのスポーツという側面だ。プロスポーツ界とは、要は、「経済活動」であり、経済市場があるということ。プロとは、ビジネスだ、という事実が今回の事件では、その悲しさを見せてしまったようだ。
私が年間収入1億2000万円なら、月収1000万円と言うことになる。そんな収入など夢のまた夢。見たこともないが…。A・ロッド選手は、年俸24億円以上である。月収2億円以上だ。私たちの生活環境では彼等の生活ぶりはとても想像できない。そんな大金、いったいなにに使うの? そんなに大金をもらって、どうすんのよ…と。お金とは、不思議な代物なのだろう…。人格さえかえてしまうのかも知れない。確かにそんな声も聞こえてきそうだが、今回のA・ロッド選手事件は実は、そうではなさそうである。「人格の問題」ではなさそうだということ。

「A・ロッド選手事件」に感じることは、20世紀を代表する長距離打者が自分の「記録」と「経済感覚」のバランスを失ったということだろう。プロスポーツは来場した観客に「100%のパフォーマンス」を見せる必要がある。それがプロスポーツに集まる観衆の要望だからである。誰よりも、「すごい」「感動的」な場面を作り上げなくては、プロ選手としての価値がないのだ。
その「パフォーマンス」に、選手の「値」が付く。そして、プロスポーツ界で生きる人々は、自分の「値」を上げることに精進する。なにせ、私たちとは比較にならない年俸が見返りになっているのだから…。将にプロスポーツ界とは、「体が資本」の世界に違いないのだ。

しかし、である。
一方で、プロスポーツを観戦する私たちにも「責任」はあると思う。A・ロッド選手を大スターに祭り上げたのは、メディアもさることながら、ボクたちでもある。ボクたちファンも各球団経営者達もまた、彼に「過大な期待」を背負わせた、とも言えまいか…。
そしてその「過酷な期待」は、A・ロッド選手だけに限らない。MLB全選手達にボクたちは「期待」をさせすぎてはいないだろうか…。A・ロッド選手がホームランを打っても「まあ、当然だろうよ。あれだけの年俸を取っているんだから」という声が、A・ロッド選手たちを含めたスター選手に追い込んでいるのではなかろうか。

これでは、あたかも古代ローマの競技場だ。

ボクは前々から思っていたことを今回ははっきりと書きますが、選手達の人件費が高すぎる。それに伴って入場料がどんどん高くなっていく。たかが野球ですよ、それも実働6ヶ月間。満員で通勤するサラリーマンは20年以上それをしています。
選手達は各球団では、人間としてではなくて「商品」になっている。

プロスポーツが子供達から愛されているのは、「夢」がある点、そのただ一点に過ぎない。
ボクが子供だった頃、長嶋さんに「過酷な期待」を背負わせたことなんてなかった。「今年巨人軍、優勝するといいなあ。ボク、それが今年の夢なんだ」って。毎年の夏、人気投票によって始めるオールスターゲームの発想は、もともと子供の「夢」からだった。

野球だけではなくて、プロスポーツ界のリーダー諸兄。頼むから、ボクたちの「夢」を壊さないでください。バットも振れない人間が、かけっこもろくろく出来ない人のほうが多いと思いますが、そう言った人々がスポーツに参加するには、「観戦」なら出来ます。この席を、奪って欲しくないのです。
「過大な期待」を選手に押しつけるファンもいるでしょうが、実は「夢」を追いかけて「観戦」している人々の方が多いはずです。
ボクたちをいつまでも「観戦」の場所に置いて下さい。

…NY152…
by mlb5533 | 2009-02-10 20:41 | 第六章