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アメリカ合衆国のど真ん中に位置するカンザス州。そうです、「スーパーマン」の故郷です。スーパーマンが幼少期から青年期を過ごした「スモールビル」も、ここカンザス州にあるとされていましたね。
「カンザス」は、この地に先住したインディアン部族のカンサ族に由来し、州内を流れるカンザス川に名付けられていたものが州名になったと聞いたことがあります。

重化学工場というより、伝統的な農業生産の州。
広々としたトウモロコシ畑が連想される…映画・スーパーマンのトップシーンのように。映画の話になったので、ついでだから、書き込んでおきましょう。

カンザスは、「オズの魔法使い」で、主人公のドロシーの故郷として登場することでも知らていますね。また、昔からカンザス州はアメリカ人の間では、「田舎」「田舎者」の代名詞です。ですから、この作品でもドロシーがカンザス出身ということで馬鹿にされる場面がありました。また、スーパーマンでも、クラーク ケントがニューヨークの新聞社に入社した初日、田舎者として扱われている場面がおもしろく演出されていました。

まあ、要するにカンザスは、東部のニューヨークやボストン、西部のサンフランシスコ、ロサンゼルスなどと比較したらそれはそれは、「田舎」であることに違いありません。

「カンザスシティロイヤルズ」は、その州とミズリー州の境にあるカンザスシティがホームです。
その「田舎者」の集まりが、大リーグのアメリカンリーグ中地区にいます。ベースボールファンは知ってはいますが、ほとんどのファンは真剣にこのチームの勝敗を追いかけようとは思いません。
なぜか、って?

「弱い」からです。

「弱くて、田舎者チーム」と聞いたら、大概の人は相手にはしないでしょう。たとえ、マグレで優勝争いをしていたとしても、日本のテレビでの中継はご遠慮させていただいて、たとえ優勝の望みもなくなった人気チームの投手の姿を中継した方が視聴率は確保されるでしょうから、ね。

さて、そのチーム名は?
「カンザスシティロイヤルズ(Kansas City Royals)」と言います。
1969年(昭和44年)に創設された若々しいチームですから、知らなかったとしても、決して恥じることはありません。正直、MLB大ファンのボクでさえ、気にも掛けない「取り柄のないチームだし…」なんて印象しかなかった…。

日本選手の元ヤクルトのトップバッターで、安打製造機とまで言われた「青木 宣親選手」が、ナショナルリーグ中地区のウィスコンシン州ミルウォーキーの「ブルワーズ」に移籍したのは、2012年。この州も米国の北。五大湖の州なので、ビジネスなら別だが、あえて観光として訪れる人はおそらく少ないだろう。同じ北の、シカゴとは違って、まあ、ここもボクにとっては「都会のチーム」とは言いがたい…。

その青木選手が今季、さらに田舎のチームから「何が何でも絶対に欲しい選手」と白羽の矢が向けられて、「カンザスシティ ロイヤルズ」に移籍したのです。
「優勝を目指せるチーム」と、青木選手が明るい表情でコメントしていたのを覚えています。
彼は2003年のドラフトでヤクルトスワローズから4巡目指名を受け、入団しました。背番号は「23」でした。そしていま、カンザスシティ ロイヤルズの青木選手の背中には「23」が記されています。この背番号で、打つ、走る姿はとても眩しいほど、です。初心者のような純粋ささえ感じさせてくれるからです。

さて、なぜいまこんな「田舎のチーム」の話をしているのか…。
もちろん、それには訳があります。

じつは今日、青木選手のカンザスシティロイヤルズは、シカゴ・ホワイトソックスに3-1で勝って、29年ぶりのプレーオフ進出を決めたのです。青木選手の3塁打で先制点を叩き出しました。
ボクは、松井選手がいなくなって、ベースボールを若い日々のように、熱い想いで観戦出来なくなっていたのです。なにかこう…、言いようのない淋しさとでも言うか…。
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その中にいて、青木選手にはなにげに、関心がありました。
田舎チームばかりを歩く日本の選手、という印象がしているからです。その体質は、あきらかにボクとは正反対です…。
宮崎県日向市の出身の青木選手と、東京・渋谷出身のボク。
早稲田大学人間科学部スポーツ科学科に指定校推薦で進学した堅実で努力家の印象を受ける青木選手と、日本大学芸術学部の演劇と文学ばかりをしていたお調子者のボクの体質は、まったく正反対でしょう。だからこそ、なんとなく…気になっていた選手でした。日本のヤクルト選手時代での活躍ぶりに、「イチロー以来の選手」という報じ方にも、多少の関心があったことは事実です。

BS中継で、青木選手のチームを放映する日はじつに少ない。それほど彼と彼のチームは、日本人にしとっても、田舎者なのでしょう…。

でもね、皆さん。
カンザスシティロイヤルズが、ですよ。今季、「10月決戦」に進出する!
って事実を、誰が予言しましたか!
移籍した青木選手自身がコメントしていただけでしたよ、ねッ。スゴイです、青木選手は。

ボクは、ちと、今日は興奮気味です。ちょっとだけだけど、気になっていた選手、安打製造機の異名をいただく青木選手とそのチームが「10月決戦」に駒を進めたことに、です。

もしかしたら…
そうです、そうです。
スーパーマンがやってくるかもしれませんぞ!
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…NY152…
by mlb5533 | 2014-09-27 14:02 | 第二部

a0094890_332253.jpg…最終回。
それは、もはや祈りに変わっていた…。

瞬間、満席のスタンドに大歓声が響き渡り、突然、4万8、613人が奏でる大拍手に変化する。そのハーモニーは満天の星空に轟き、そして、透きとおった人々の瞳から熱い涙が溢れて頬を伝っていた…。


いや、待て。
この感動の人数は、4万8、613人のスタンドの観客だけで足りるわけがない。
全米の、いやいや、全世界のベースボールファンはスタンドにこそ陣取れなかったものの、テレビが映し出す映像から、あるいは、カーラジオの音に、4万8、613人と同じような表情で、歓喜の渦に参加していたに違いない。ボクのように…。



これがベースボールの「ドラマ」であり、このドラマに魅せられた者たちは等しくベースボールファンとなり、集い合い、その心の響きがベースボールの世界を育くんできた。今宵、スタンドから響き渡った4万8、613人のサウンズは、あたかもベートーベン交響曲第9番「合唱」のように、「歓喜の歌」そのものではないか。生きている証を見せてくれる…。

日本時間、2014年9月26日(現地25日)、米国ニューヨーク州、ニューヨーク・ブロンクスにある野球の殿堂「ヤンキースタジアム」で起きた真実のドラマである…。


この試合は、ヤンキースがホーム球場ヤンキースタジアムで行う2014年シーズン最後の試合だった。今シーズン限りで引退を告げているジーター選手にとっても、20年のキャリアにホームでの試合にピリオドを打つ試合になった。ヤンキースファンは、ジーター選手の地元スタジアムでプレーする最後の試合だ。スタンドでは、「ジーター」の合唱が試合前から響いているほど、特別な、歴史的試合になった。

ファンはなんとしても、「勝つ姿」を見たい。ジーター選手が大活躍して「勝つ試合」になって欲しい。そんな想いを抱いて、スタンドから声援を送る。
ヤンキース先発投手は、黒田投手だ。
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今シーズン、ただひとりローテーションを守り続けたヤンキースのエースでもある。
ところが、相手チームの先頭打者と2番打者にホームランされ、あっさり2点の先制を許してしまう。しかし、ヤンキースは先頭打者・ガードナー選手が出塁して2番・ジーター選手がレフトセンター間のフェンス直撃の2塁打でまず1点、マッキャン選手の打撃は相手チームのエラーを誘い、その間にジーター選手が生還。あっさり、同点。試合は早々と振り出しに戻った。
その後試合は6回まで動かない。そして、7回ヤンキースの攻撃。満塁で、ジーター選手を迎える。
打球はゲッツーか…と思われたが、エラーになり、2点が得点された。
4-2
そして、マッキャン選手が犠打を打って、5-2。

黒田投手の13勝は確実…と、思っていたらなんとなんと、抑えのロバートソン投手が2ホーマー、3点を浴びて、5-5の同点にされた。

そして、9回裏。
野球の神様は実に見事な、決して凡人でも忘れることがない、ドラマとはこれだと言わんばかりの台本を急遽、書き上げてグランドに投げ入れた。
その台本とは…。

ヤンキースは代走・リチャードソン選手を2塁において、バッターにジーター選手を登場させるという、恥ずかしいほど、初級者的な、しかし、観客が最もみたいであろう舞台をそのまま素直に用意してくれた。

『ジーター選手がここでヒットを打てば、サヨナラゲームになる…、そして、この打席がジーター選手のキャリア20年、ホーム球場での最後の打席になる…』
…という舞台設定が、いま現実になった。

『打ってくれ…! ジーター…最後だ…!』
と、願って、全世界の野球ファンはこの瞬間に奇跡が起きることを信じた。

だから当然、人々は、祈った…。
それぞれの想いを、なにかに託さざるを得ないほど、胸が異常に熱い…。

人々は、このとき、等しく、祈りの姿になった…。

祈りが届いた!
その願いが叶った!

ジーター選手は、いつもの「あのジーターヒット」と呼ばれている右打ち、「ライト前ヒット」を、なんと第1球で決めてくれた。

人々の表情は、祈りの姿から、歓声に変わって、拍手のハーモニーになり…そして、あたたかい涙と変わっていく…。
ジーター選手は、またしても最後の最後に「自叙伝」を綴ってくれた。こういうことが出来る選手だからこそ、ボクたちはジーター選手を「英雄」と呼び、「キャプテン」と言い合う。

この試合こそ、「ベースボールの醍醐味」であり、この試合がヤンキースの伝統的試合運びであり、勝ち方であり、そして誰も演じきれない打撃…を、またしても見せる「背番号2」のジーター選手なのである。

真のヒーローとしてその名前を多くのファンの心に永遠に記憶させる選手だけが為し得る「神技」を惜しげもなく最終の舞台でも、ボクたちの心眼に浸みとおしてくれた選手はそうはいない。


そう、もう二度と観ることが出来ないベースボールの神童「デレク・サンダーソン・ジーター(Derek Sanderson Jeter)」が、この舞台でも…またしても…「神技」を披露してくれた。「デレク ジーター」の名前と「背番号2」はこうして伝説になり、彼の野球物語はこの最終戦から書き始まることになるだろう…。

スポーツは単純だ。勝ち負けの世界だから。
人は「勝ちの世界」とつながっていたいとの要求、欲望がある。「勝ち」、そう、「うまくいった状態」に、この身を置きたい。「負け」、そう、「うまくいかなかった状態」は避けたいのだ。スポーツに限らず、人生すべてに、である。

今日、26日。
世界中の野球ファンは、ヤンキースタジアムに集まっていた。
そして、ジーター選手の「勝った姿」を自分の人生にできた日なのだ。間違いなく…。しかも、劇的に、熱情を込めて「勝ったよ」と。

だから、今日だけは、ヤンキースのファンはもとよりのこと、ベースボールのファンたちは、すべてその人生で「勝った」ことになる日なのだ。
自分史をジーター選手とともに綴った日になった…。
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…NY152…
by mlb5533 | 2014-09-27 02:51 | 第二部